ちょっと私的にはやっぱり長い。。
描写が綺麗だったり、個々人の背景も丁寧に描かれているこの名作。
がしかし、暗いトーンで進れでいくストーリー。
現在、私はそこまで暗くない。
そこまで積極的に読めませんでした..、でも頑張って読んだ笑
※ネタバレ
私のお気に入りシーン。
主人公の私が両親のところに帰って、大学の卒業証書を見せる場面があるのですが、
私という人物はこんな卒業ぐらいなんてことはないみたいに思っていて。
喜ぶ父親のことを田舎者はこうだからみたいに思うのです。
実際に言葉にして、父を小ばかにするような感じで言うのです。
父親は元気であるけど、病気を患っていて、その様子も細かく書かれています。
父は息子の上記の言葉に対して、
「こうやって父という立場から卒業できた事実を見ることができたのが嬉しいんだよ」みたいな。
「いつ死ぬか分からないから」というようなことを言っていて。
父親にそう言われて、[私は一言もなかった。あやまる以上に恐縮してうつむいていた。]
とあって、なんだかじんわりきました。
なんとなく読んでしまうと、当たり前のことだけれど、「私」と一緒に読者にも、
身のまわりの人の大切さについて気付かさせる、そんなワンシーンなのかなと思いました。
物語のクライマックスについて。
Kの遺書の最後にもっと早く死ねば良かったみたいなことが書いてあって、
これは..という感じでした。
初めは本当に大事な友達として、Kを家に招き入れた私(先生)でしたが、
1人の女の人をめぐってこんなことになってしまうとは..。
恋のために突っ走ってしまったのですよね..。
二人の男が1人の女性(お嬢さん)をめぐって、というものなのですが、
でも選ぶのは結局その女性、相手次第なのになと思ってしまいます。
Kは友人である私にお嬢さんへの気持ちを打ち明けます。
何でもできるKを相手(恋敵)にしているからこそ、私はKにヒドイことを言ってしまうのです。
Kには信仰する宗教があるから、「精神的に向上心のないものはばかだ。」と、
お嬢さんへの恋心を滅多切りにしてしまうのです。
道のためにはたとえ恋でも、その妨げとなるそうで、
Kの性格を知っている私だからこそ言えてしまう、トドメのような言葉で。
Kに対して、劣等感があるから先手を打って、
お嬢さんの母である奥さんに結婚の話を持ち掛けてしまいます。
Kの知らないところで。
結婚の話は進んでいくのです。
でも、友達だからこそ言ってほしいですよね..。
こそこそ結婚の話なんて進めずに、実は俺もお嬢さんのことを好きなのだと。
男の友情は言葉少なめなのか..言葉足らずなのって淋しいなと思ってしまいました。
Kもですが、妻(サイ)も言ってほしかったと思う。
これはKが死んでから何年も経ってからのことです。
Kが亡くなった詳細を妻に言ってしまうと、
『妻に汚点が..、だから言えない』なんて私(先生)は綴っているのです。
愛していたら愛しているからこそ、言ってあげてー!!と、思うのは私だけ?
しかもここで私(先生)が死んでしまったら、ホントに奥さんは何も分からなくなってしまう。
ずっと何が原因で、夫がふさぎこんでしまったのか分からないまま。
もしかしたら、奥さんだって理由が分からないせいで、ふさぎこんでしまうかもしれない。
なんてフィクションの話なのにこんなに入りこんでしまいます。
それぞれの登場人物を繊細に描いていて、でも私はどうしてそこで言わなかったんだいと
ツッコミたくなりましたが、人生そんなもんですよね..。
誰にでも経験のあることなのかもしれません。
始めは小さなことで、ここで言っておけば、
後々にコトが大きくなっていって、言うキッカケを見失ってしまうという…。
そんな心情の変化や動きが細かく描かれいます。
ネタバレなし。これから読んでみたいと思っている方へ。
あの、声を大にして言いたいことがありまして。
私は本に書いてあるあらすじから読んでしまった。
これは私にとっては、アガサクリスティーの「オリエント急行殺人事件」の犯人を
言ってしまっているぐらい、最後をさらけ出してしまっている気がするのです。
「先生と私」の章で先生の昔に何があったのかという伏線のようなほのめかしが
出てくるのですが、ラストを知ってしまっていると、伏線もただの飾りでしかないというか。
『坊ちゃん』もそうなのですが、あらすじは最悪です。。
本は前から全部読むものと、読書をの仕方を全然知らない私は思っていたのです。
絶対、あらすじなんて読まない方がいい。(私にとっては)
せめて、一番最後に付けてくれ泣
漱石が書いていた当初は、新聞か何かに『こころ』が連載されていたみたいで、
それは本当にラストに近づいてくると、ハラハラドキドキしたんだろうなと。
次はどうなるのと、待ち遠しいですよね。
絶対、初見の方が楽しめるじゃん。。
出版社さん、あらすじは最後にして欲しいです。
何も考えずに読んでしまう人もいるのでは。。(私だけ?)
ホントにやめてほしい。
内容を知らない方は是非、あらすじは読まず、
まっさらな、何も知らない状態で、本を手に取って欲しいです。
ちょっと暗めのトーンなので、病んでる時に読みやすいかもしれないです。
長ーい大作ですが、我慢して?、読む価値ありです。
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